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その他印刷物-2

【ひとりぼっちのじぐざぐ―ある高校教師の奮闘記―】
 寺沢精哲著/1993年3月20日/A5判187頁/私家版

 1968年〜1993年まで、25年間にわたり光陵に在職された寺沢精哲(てらさわあきよし)先生(社会科・世界史)が、 退職を機に出版された半生記。雑誌「光陵」「光陵だより」「望景」(文芸部部誌)等に掲載された原稿の再録をもとに 「小規模校光陵の初期―高校紛争の余波―」「雑誌「光陵」の編集とわたし」「PTA広報委員会讃歌」等 のテーマについての文章が収録されている。
巻末にはご自身の年譜と執筆一覧が付されている。

【光陵生にススメる100冊の本】近藤哲司・戸田崇著
  B5判204頁 2008年3月発行/私家版(限定300部)

 光陵高校の元教員である近藤哲司氏(倫理担当/1994年〜2004年在職)と戸田崇氏(日本史担当/1999年〜2006年在職)が、執筆された表題の生徒向け読書案内が、このほど完結し、私家版として発行された。 原本は光陵生に配付されたプリントである。B4用紙の表裏に各1回分が掲載されており、それが50枚発行されたことになる。
表題は100冊の本だが、同じ作者の作品や関連した書籍などについて、各回ごとに言及されているので、その総数は数百冊に及ぶと見られる。 できれば、巻末には、それらのリストも欲しかったところだ。

 しかし、それにしても、数百冊の書籍を紹介するには、さらにその何倍もの本を読んでいる必要があるのではないか。 それを思うと、両氏の大海のような読書量とその見識は驚嘆に値する。 各回のプリントは、前半に両氏のエッセイ、そして、それを受けるかたちでの読書紹介というスタイルになっている。 この前半の導入部こそが本書を読む最大の楽しみと言える。 なぜなら、そこには、両氏の該博な知識だけではなく、「なぜ私は、この本を読んだのか」、そして「今、どうして取り上げるの」かという個別的で切実な問題が、瑞々しく語られているからだ。
その多くは、日常的な生徒との触れ合いをもとにした見解であるが、時には時事的な話題や社会問題に及び、あるいは著者らの高校生・学生時代の回想となる。 また、両氏の趣味や教師としてのライフスタイルが語られもしている。
これは読書ということが、その人の実体的生活や人間性と結びつかない限り意味をなさないことを示している気がする。 つまり、始めから名著や名作があるのではない。「私にとって大切な本」、それこそが、まさしく「大切な本」なのだろう。 別の言い方をすれば、両氏のじつに豊かな人間性が、読書体験と有機的に関連していたことに私たちは気づく。さらにそのことが、私たちを深く魅了し、勇気づけてくれる。

 なお、本書には両氏の他、ゲスト執筆者として、蘇武和成、阿出川範子、菱刈俊作、国分早苗の各氏が、それぞれ1回づつを担当されている。 このうち蘇武氏以外はすでに光陵の教職を去られている。

最後に、本書は「光陵生にススメる」ことを前提に執筆された。「高校生に」ではないことを強調しておきたい。 より多くの読者を意識するなら、「高校生にススメる100冊の本」であっても、もちろんよかったのである。 このことを考えると、光陵生諸君が、ぜひとも本書を手にしてくれるよう、つよく願わずにはいられない。 しかし、生憎、本書は私家版のため、必ずしもその条件が整っていないとも言えるが、図書室には完備しているので、とりあえずは、そこでの出会いを期待している。
(2006年・2007年度PTA会長 穴澤秀隆)


「光陵生にススメる100冊の本」

001 『中国行きのスロウ・ボート』-----(村上春樹)
002 『白鳥の歌なんか聞こえない』-----(庄司薫)
003 『娘に語る祖国』-----(つかこうへい)
004 『青が散る』-----(宮本輝)
005 『クロスファイア』-----(宮部みゆき)
006 『さぶ』-----(山本周五郎)
007 『三四郎』-----(夏目漱石)
008 『銀の匙』-----(中勘助)
009 『山月記・名人伝』-----(中島敦)
010 『野菊の墓』-----(伊藤左千夫)
011 『絶対音感』-----(最相葉月)
012 『忘れられた日本人』-----(宮本常一)
013 『将棋の子』-----(大崎善夫)
014 『やせっぽちのからだに勇気だけをつめこんで』-----(さとうつかさ)
015 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』-----(J.D.サリンジャー)
016 『指輪物語』-----(J・R・R・トールキン)
017 『印度放浪』-----(藤原新也)
018 『十七歳・1964年春・1964年秋』-----(ボブ・グリーン)
019 『三国志』-----(吉川英治)
020 『樅の木は残った』-----(山本周五郎)
021 『彼らの流儀』-----(沢木耕太郎)
022 『青葉繁れる』-----(井上ひさし)
023 『愛と幻想のファシズム』-----(村上龍)
024 『戦時下に生きる 第二次世界大戦と横浜』-----(伊豆利彦)
025 『夜と霧』-----(ヴィクトール・E・フランクル)
026 『護持院河原の敵討』-----(森鴎外)
027 『哲学って何だ』-----(竹田青嗣)
028 『武蔵野』-----(国木田独歩)
029 『砂の女』-----(安部公房)
030 『どくとるマンボウ青春記』-----(北杜夫)
031 『世に棲む日日』-----(司馬遼太郎)*蘇武和成
032 『哀愁の町に霧が降るのだ』-----(椎名誠)
033 『猫町』-----(萩原朔太郎)
034 『母なる自然のおっぱい』-----(池澤夏樹)
035 『鉄鼠の檻』-----(京極夏彦)
036 『四十七人の刺客』-----(池宮彰一郎)
037 『不毛地帯』-----(山崎豊子)
038 『人間の土地』-----(サン=テグジュペリ)
039 『パパ・ユーア・クレイジー』-----(ウィリアム・サローヤン)
040 『我が名はアラム』-----(ウィリアム・サロイヤン)
041 『ヴェニスに死す』-----(トーマス・マン)
042 『坊ちゃん』-----(夏目漱石)
043 『ケインとアベル』-----(J・アーチャー)
044 『法律事務所』-----(ジョン・グレシャム)
045 『ツァラトゥストラかく語りき』-----(ニーチェ)
046 『チップス先生さようなら』-----(ヒルトン)
047 『オイディプス王』-----(ソフォクレス)
048 『蒼き狼』-----(井上靖)
049 『桜の園』-----(チェーホフ)
050 『終業式』-----(姫野カオルコ)
051 『方法序説』-----(デカルト)
052 『羆嵐』-----(吉村昭)
053 『ワイルド・スワン』-----(ユン・チアン)
054 『霞町物語』-----(浅田次郎)
055 『悪童日記』-----(アゴタ・クリストフ)
056 『九月の空』-----(高橋三千綱)
057 『二都物語』-----(チャールズ・ディケンズ)
058 『北越雪譜』-----(鈴木牧之)
059 『グレート・ギャツビー』(-----スコット・フィッツジェラルド)
060 『ルバイヤート』-----(オマル・ハイヤーム)
061 『月と6ペンス』-----(サマセット・モーム)
062 『サキ短編集』-----(サキ)
063 『ソラリスの陽のもとに』-----(スタニスワム・レム)
064 『本読みの虫干し』-----(関川夏央)
065 『家父の気がかり』-----(フランツ・カフカ)
066 『辻征夫詩集』-----(辻征夫)*菱刈俊作
067 『1984年』-----(ジョージ・オーウェル)
068 『がんばっていきまっしょい』-----(敷村良子)
069 『クオ・ワディス』-----(シェンキェーヴィッチ)
070 『ローマの歴史』-----(モンタネッリ)
071 『コンスタンティノープルの陥落』-----(塩野七生)
072 『科挙』-----(宮崎市定)
073 『地獄変』-----(芥川龍之介)
074 『夜のピクニック』-----(恩田陸)
075 『KWAIDAN』-----(Lafcadio Hearn)*阿出川範子
076 『日本文学の古典50選』-----(久保田淳)
077 『モンテ・クリスト伯』-----(A・デュマ)
078 『双頭の鷲』-----(佐藤賢一)
079 『異邦人』-----(カミュ)
080 『わんぱく天国』-----(佐藤さとる)
081 『眠れる美女』-----(川端康成)
082 『民藝四十年』-----(柳宗悦)
083 『中国の旅』-----(本多勝一)
084 『春の夢』-----(宮本輝)
085 『風が強く吹いている』-----(三浦しをん)
086 『正義と微笑』-----(太宰治)
087 『春琴抄』-----(谷崎潤一郎)
088 『冬の鷹』-----(吉村昭) 『蘭学事始』(菊池寛)*国分早苗
089 『ファウスト』-----(ゲーテ)
090 『鹿男あをによし』(万城目学)
091 『カラマーゾフの兄弟』-----(ドストエフスキー)
092 『百年の孤独』-----(G・ガルシア=マルケス)
093 『星の王子さま』-----(サン=テグジュペリ)
094 『八甲田山死の彷徨』-----(新田次郎)
095 『君主論』-----(マキアヴェッリ)
096 『父の詫び状』-----(向田邦子)
097 『一握の砂』-----(石川啄木)
098 『陰翳礼讚』-----(谷崎潤一郎)
099 『豊饒の海』-----(三島由紀夫)
100 『「いき」の構造』-----(九鬼周造)
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